”つくる”と”食べる”を近くする
私たちは、もともと農家ではありませんでした。縁あって移住してきたこの安芸高田市。そして、縁あって始めた農業。実際に土に触れ、お米や野菜を作るようになってから、また、その農産物を自分たちで食べるようになってから、沢山の事を感じるようになりました。スーパーでお米や野菜を買って食べる事が当たり前の世の中。それは、人の口に入るモノがどうやって作られているのかよくわからない、ブラックボックスの中にいるという事。
どうしたらいいんだろう?
作る立場になって見えたこと、考えはじめたこと。その答えの一つが、つくると食べるを近くする、という事でした。
その作物がどのように作られているのか、どんな場所で作られているのか。また、どんな人が作っているのか。その背景をちょっとでも知ってみたりするだけで、”社会問題”と呼ばれる自分の身の回りで起こっているいろんな事柄を、考えてみるきっかけになるんじゃ無いかと信じています。
私たちがこの農業で取組んでいる事は、高齢化で過疎が進んでいるこの農村の地域活性化。地域の人たちは、先祖代々一生懸命守って来た田んぼや畑に後継者がいなくて廃れる事に心を痛めていました。また、過疎化で元気が無くなっていく村の未来を憂いていらっしゃいました。
今、私たちは、沢山の農地を託されています。託してくださった方達の想いを肩に背負って、また、未来の笑顔を想像しながら頑張ります
谷川さんとの出会い
私たちが移住した古民家の譲り主さん。この地域との出会いは、谷川さんからスタートしました。
家を購入するには、土地に付属する先祖代々受け継がれた田んぼをちゃんと守っていく事という、条件がありました。でも、日本でお米を作ったことがない私たち。どうやってお米をつくるのか。田植え機の使い方、水の管理の仕方、出荷の仕方。家を購入する前の一年間、米作りを一から教えて下さいました。
今でも、我が家の米作りの師匠として、田植え収穫には、必ず駆けつけて下さいます。先祖を思う気持ち。それを絶やさず未来につなげたいと思う気持ち。私たちはその想いを引き継いでいます。
師匠から美味しいと太鼓判をもらったお米、その師匠の想いと共に、沢山の人に食べてもらいたい。そう私たちは思っています。
田槙さんとの出会い
この地域の魅力に魅了された私たち。農家になって地域に根ざして生きて行きたい。そう願うようになりました。
「農業は思ったほど甘くない」
田槙さんからは、初対面で厳しく忠告されました。でも、その言葉の裏には、農業を通じて地域を守るという信念と誇りがありました。
その後、病を患い農業が続けれなくなった田槙さん。後継者として私たちは名乗りを上げました。
移住前後の私たちの姿をしっかりと見てくださっていた田槙さんは、「その言葉を待っていた」と、命をかけて水菜栽培を一から教えて下さいました。
そして、私たちを息子娘と信じてくれて、農業を通じて地域を守る夢を託してくださいました。
田槙さんがもう亡き今でも、私たちは、その夢を引き続き一緒に見ています。
地域に支えられて
たまきさんが、遺してくれた私たちの宝。農業を通じて地域を守るという夢と、地域との繋がり。まわりを助けなさい。そうすればみんな助けてくれる。地域のお世話役として築いてこられた、その絆を、私たちに繋いで下さいました。でも今は、まだまだ助けてもらってばかり。どうやって恩返しをしていこうか。なにが出来るか、一生懸命模索しています。
つなぐ大地の絆 -Baton-
2022年10月27日にRCCテレビ「つなぐ大地の絆 -Baton-」にてジェスン農園が放映されました